2026年卒 就活生・内定者 匿名座談会(後編) ――「エッホエッホ」と走り続けた先で、彼らは何を信じたのか

形式:匿名座談会(会話中心)
対象:2026年卒 就活生・内定者
登場人物
- PIKO:採用ハック ディレクター。本座談会の進行役
- Aさん:メーカー内定/地方国立/理系/堅実志向
- Bさん:IT内定/私大文系/早期内定組
- Cさん:就活継続中/首都圏私大/不安強め
- Dさん:内定承諾後に迷い中/難関大/第一志望内定
- Eさん:内定辞退経験あり/複数内定/最終的に再就活
座談会 後編
変わっていった気持ち
――「楽しかった就活」が、いつの間にか重くなるまで
PIKO
ここからは、就活の「時期ごとの気持ち」の話をしたいんですけど。まず、始める前とか、初期の頃って、どんな気持ちでした?
Cさん(就活継続中)
……意外と前向きでした。
PIKO
前向き。
Cさん
はい。怖いというより、「どんな感じなんだろう」って。
Bさん(IT内定)
私もです。イベントとか、ちょっと楽しんでました。
PIKO
楽しい。
Bさん
自己分析とか、「自分を知る」感じが新鮮で。
Aさん(メーカー内定)
まだ余裕ありましたね。
PIKO
余裕。
Aさん
はい。周りも本気じゃなかったですし。
Dさん(内定承諾後に迷い中)
「まだ大丈夫」って思えてました。
PIKO
焦りはなかった?
Dさん
ほぼなかったです。
Eさん(内定辞退経験あり)
私は、「売り手市場」って言葉を普通に信じてました。
PIKO
信じてた。
Eさん
はい。なんとかなるだろう、って。
PIKO
その空気が変わったのって、いつ頃でした?
Aさん
年明けです。
Cさん
同じです。
PIKO
何が変わった?
Cさん
落ち始めた。
PIKO
落ち始めた。
Cさん
はい。ESとか、一次面接とか。
Dさん
それまで通ってたのに、急に通らなくなって。
PIKO
その時、どう感じました?
Dさん
……結構、きました。
PIKO
きた。
Dさん
「ダメなんだ」って。
PIKO
能力的に?
Dさん
いや、自分そのものが。
Bさん
分かります。人格否定された感じ。
PIKO
そこまで。
Bさん
はい。理由も分からないので。
PIKO
フィードバックもない。
Bさん
ないです。
Aさん
「ご縁がなかった」だけ。
PIKO
その言葉、どう感じました?
Aさん
正直、一番しんどかったです。
PIKO
その頃、SNSは見てました?
Cさん
めちゃくちゃ。
PIKO
どうでした?
Cさん
地獄です。
PIKO
地獄。
Cさん
内定報告が増えて。
Dさん
タイムライン開くたびに、心臓が重くなる。
Eさん
見なきゃいいのに、見ちゃうんですよね。
PIKO
見ちゃう。
Eさん
はい。置いていかれてる感じがして。
PIKO
その時期、ミームとか増えました?
Aさん
増えました。
Bさん
一気に。
PIKO
どういう使い方でした?
Cさん
言葉にできないから、画像で。
Dさん
文章書く余裕がない。
PIKO
なるほど。
PIKO
そこから、内定が出始めたタイミング。どうでした?
Bさん
……一瞬、嬉しかったです。
PIKO
一瞬。
Bさん
はい。でも、すぐ別の感情が来ました。
PIKO
どんな?
Bさん
縛られた感じ。
PIKO
縛られた。
Bさん
はい。
PIKO
Aさんは?
Aさん
安心より、責任感が来ました。
PIKO
責任感。
Aさん
「ここに行かなきゃ」って。
Dさん
逃げられない感じ、ありました。
PIKO
内定って、ゴールじゃなかった。
Dさん
全然。
Cさん
むしろ、別のスタート。
PIKO
内定承諾書を出すとき、どんな気持ちでした?
Aさん
怖かったです。
PIKO
怖い。
Aさん
契約書みたいで。
PIKO
法的には違うけど。
Aさん
頭では分かってても、感覚的に。
Dさん
「裏切れない」って思いました。
PIKO
誰を?
Dさん
会社もですし、自分も。
PIKO
自分。
Dさん
「ここに決めた」って言った以上、揺らいじゃいけない、みたいな。
Eさん
でも、揺れますよね。
PIKO
揺れる。
Eさん
はい。ずっと。
PIKO
内定後も、迷いは続いてました?
Cさん
続いてました。
Bさん
むしろ強くなりました。
PIKO
どうして?
Bさん
「この選択で一生決まる」気がして。
PIKO
重いですね。
Bさん
重いです。
Aさん
周りは「おめでとう」って言うけど、自分は全然おめでたくなくて。
PIKO
それ、言えました?
Aさん
言えないです。
PIKO
なぜ?
Aさん
贅沢に聞こえそうで。
Dさん
分かります。
PIKO
入社前、どんなこと考えてました?
Eさん
不安ばっかりでした。
PIKO
具体的には?
Eさん
ちゃんとできるか。期待に応えられるか。
Dさん
自分が、思ってたほど優秀じゃないって気づき始めて。
PIKO
それ、いつ頃?
Dさん
内定後です。
PIKO
選考中じゃなくて。
Dさん
はい。終わって、一人になったとき。
PIKO
実際に入社して、どうでした?
Eさん
……想像と違いました。
PIKO
どのあたりが?
Eさん
仕事もですけど、自分が。
PIKO
自分。
Eさん
全然できなくて。
PIKO
その時、どう思いました?
Eさん
「騙してたな」って。
PIKO
誰を?
Eさん
会社も、自分も。
Dさん
それ、すごく分かります。
PIKO
周りに相談は?
Eさん
できなかったです。
PIKO
なぜ?
Eさん
期待されてるのに、弱音吐けない。
Dさん
「内定もらったんだから」って言われそうで。
PIKO
言われなくても、自分で思ってしまう。
Dさん
はい。
PIKO
振り返ってみて、一番ギャップがあったのはどこだと思います?
Aさん
「終わったら楽になる」と思ってたところ。
Cさん
それです。
Bさん
終わりじゃなかった。
PIKO
むしろ。
Bさん
始まってからの方が、しんどかった。
PIKO
最後に聞かせてください。もし今、就活を始める前の自分に一言言うとしたら?
Cさん
思ったより長いよ、って。
Aさん
無理しすぎるな、って。
Dさん
演じすぎるな、ですね。
Eさん
ちゃんと不安になっていい、って言いたいです。
PIKO
……ありがとうございます。
振り返って分かったこと
――それでも、就活は間違っていなかったのか
PIKO
ここまで全部話してきて、改めて聞きたいんですけど。2025年の就活って、一言で言うと何だったと思います?
Aさん(メーカー内定)
……サバイバル。
PIKO
サバイバル。
Aさん
はい。勝つ、というより、落ちないように。
Cさん(就活継続中)
削られ続ける感じ。
PIKO
削られる。
Cさん
毎回ちょっとずつ。
Dさん(内定承諾後に迷い中)
静かですよね。
PIKO
静か。
Dさん
派手に失敗するわけじゃないけど、ずっと緊張してる。
Eさん(内定辞退経験あり)
息を止めたまま、長距離走ってる感じ。
PIKO
よく、「最近の学生は安定志向だ」って言われますけど、その言葉、どう感じます?
Bさん(IT内定)
うーん……。
PIKO
率直に。
Bさん
違うなって。
PIKO
何が違う?
Bさん
安定したいというより、壊れたくない。
PIKO
壊れたくない。
Bさん
はい。それだけ。
Cさん
「挑戦したくない」っていうより、戻れなくなるのが怖い。
PIKO
戻れなくなる。
Cさん
一回崩れたら、全部ズレそうで。
PIKO
本音を話さなかったこと、後悔はありますか?
Dさん
……あります。
PIKO
どんな?
Dさん
もっと正直に話してたら、違う会社に行ってたかも、って。
Aさん
でも、正直に話してたら、内定は出てなかったと思います。
PIKO
そこですよね。
Eさん
本音を出すと、負ける感じがした。
PIKO
負ける。
Eさん
評価されない、みたいな。
PIKO
じゃあ逆に、「演じたこと」はどうですか?
Aさん
必要だったと思います。
PIKO
必要。
Aさん
じゃないと、通らなかった。
Dさん
私も。やらなきゃ無理でした。
PIKO
でも。
Dさん
後で、しんどくなりました。
PIKO
どうして?
Dさん
自分で作った自分に、追いつけなくて。
Cさん
分かります。
PIKO
「超人」みたいな自分を、作ってた感覚、ありました?
Bさん
あります。
PIKO
どんな?
Bさん
何でもできる人。失敗しない人。
PIKO
それを演じてるときは?
Bさん
走れてました。
PIKO
走れてた。
Bさん
でも、止まった瞬間に来ました。
PIKO
何が?
Bさん
「これ、無理じゃない?」って。
PIKO
内定が出たとき、一番強かった感情って何でした?
Aさん
義務感。
PIKO
義務感。
Aさん
ここに行かなきゃ、って。
Cさん
安心より、責任。
Dさん
期待が重かった。
PIKO
もし、企業の人がここにいたら、何を伝えたいですか?
Eさん
……本音を知りたいです。
PIKO
本音。
Eさん
いいことだけじゃなくて。
Aさん
大変なところも。
Dさん
向いてない人の話も。
PIKO
それを聞いたら、志望度下がりません?
Dさん
下がる人もいると思います。
PIKO
でも。
Dさん
残る人は、ちゃんと残る。
PIKO
お金の話、もう一度聞いてもいいですか。初任給を上げる会社が増えたこと、どう感じました?
Cさん
正直、救われました。
PIKO
救われた。
Cさん
「分かってくれてる」って。
Aさん
夢より先に、現実を見てくれてる。
PIKO
やりがいは?
Bさん
後でいい。
PIKO
後で。
Bさん
まず、生きてから。
PIKO
じゃあ最後に。これから就活する人に、一言ずつ伝えるとしたら?
Cさん
怖がっていい。
Aさん
強くなろうとしすぎないで。
Dさん
演じすぎないで。
Eさん
ちゃんと休んで。
Bさん
ゴールは、内定じゃない。
PIKO
……ありがとうございます。
PIKO
最後にもう一つだけ。もし、「立ち止まっても大丈夫」って最初から分かってたら、就活、変わってたと思います?
Aさん
変わってたと思います。
Cさん
だいぶ。
Dさん
もう少し、自分を守れたかも。
PIKO
それが、一番の示唆かもしれませんね。
編集後記
売り手市場と言われる中で、就活生は甘えている訳ではなく、むしろ過剰なほど現実的で、過剰なほどの我慢強さ。
彼らは本音を語らないのではないです。語れない構造の中で、生き延びようとしているだけです。
企業がすべきことは、夢を語らせることではなく、まず、壊れなくていい場所だと証明することなのかもしれない。
彼らが、安心して立ち止まれる時間を、私たちは用意できているだろうか。
※本記事は、情報保護の観点から、内容は編集・再構成しています。