「ネタ切れしない」インスタ運用
『Z世代にはSNSが効く』って言うからインスタを始めたけど、何を投稿すればいいか分からない。『キラキラした社内イベント』なんてそんなに無いし、ネタ探しだけで一日が終わる。
このお悩みは、「インスタ=キラキラさせなければいけない」という『インスタ映えの呪い』にかかっている証拠かもしれません。
採用におけるInstagramの本当の目的は、インフルエンサーのように「憧れ」を集めることではなく、未来の同僚となる学生に「共感」してもらい、入社後の姿をリアルに想像してもらう「ファン作り」の場です。
「ネタ探しで一日が終わる」という状況から脱却し、貴社の「ありのままの姿」を魅力的に伝え、持続可能なアカウント運用を実現するための打ち手をご紹介します。
ステップ0:まず、あなたのアカウントを診断しよう
なぜネタ探しに苦労しているのか、その根本原因を探りましょう。以下に当てはまるものはありませんか?
- □ キラキラ病:
「社内イベント」「受賞歴」「おしゃれなオフィス」といった、特別なトピック以外は投稿してはいけないと思い込んでいる。 - □ 目的不明瞭型:
「ブランディングのため」「応募者増のため」といった目的が曖昧で、誰に何を伝えたいのかが定まっていない。 - □ 担当者孤独型:
アカウント運用をすべて一人で抱え込み、社内からネタを集める仕組みがない。 - □ 完璧主義型:
投稿一つひとつのデザインや文章に時間をかけすぎてしまい、疲弊している。 - □ 一方通行型:
学生からのコメントやDMへの反応が薄く、企業からの情報発信だけになっている。
これらの課題を解決する鍵は、「完璧な非日常」から「共感できる日常」へと発想を転換することです。
ステップ1:ネタ探しの前に「アカウントの骨格」を設計する
やみくもにネタを探す前に、アカウントの「誰に」「何を」「どのように」伝えるかを決めましょう。これがブレなければ、投稿内容に一貫性が生まれます。
- ターゲット学生(ペルソナ)を具体的にする
- NG:「Z世代の学生」
- OK:「地方出身で、都会での成長に意欲はあるが、人間関係の温かさも重視している大学3年生。サークル活動で後輩の相談に乗るのが得意。」
- → この学生が知りたいのは、派手なイベントよりも「入社1年目の先輩がどうやって仕事に慣れていったか」といったリアルな情報です。
- 提供する価値(コンセプト)を言語化する
- ナビサイトでは伝えきれない、自社ならではの魅力を定義します。
- 例: 「失敗を恐れず挑戦できる、若手の成長サポート環境」「役職や年次関係なく、本音で議論するカルチャー」
- → このコンセプトが、すべての投稿の「背骨」になります。
- トーン&マナー(トンマナ)を統一する
- アカウントの「人格」を決めます。
- 例:「親しみやすい後輩キャラ」「論理的で知的な先輩キャラ」「情熱的で面倒見の良い兄貴キャラ」など。
ステップ2:ネタ切れを解決する具体的な打ち手
アカウントの骨格が固まったら、次はいよいよ具体的な打ち手です。持続可能な運用を実現するための4つの施策を表にまとめました。
1. 「日常コンテンツ」の量産体制構築
・社員のデスク周り、ランチ、会議の様子など「日常の風景」を積極的に投稿する。
・エンゲージメント率
・投稿の保存数
2. 「ストーリーズ」を主戦場にする戦略転換
・質問、アンケート、クイズなどのステッカー機能をフル活用し、学生を巻き込む。
・スタンプ反応率
・プロフィールアクセス数
3. 全社を巻き込む「ネタ集め」の仕組み化
・各部署に1名ずつ「インスタ協力アンバサダー」を任命し、ネタ集めを依頼する。
・他部署社員の登場回数
・フォロワーからのコメント数
4. 「ハッシュタグ・リール」の戦略的活用
・30秒程度の短い動画(リール)で、オフィスツアーや社員の一問一答を作成する。
・リーチ数
・ハッシュタグ経由のインプレッション数
打ち手1:「日常コンテンツ」の量産体制構築
これが最も重要な発想の転換です。学生が知りたいのは、年に一度の派手なイベントより「入社後364日の日常」です。社員のデスクにあるこだわりのアイテム、ランチでよく行くお店、会議室のホワイトボードに書かれた議論の跡、給湯室での雑談風景など、すべてが「リアルな社風」を伝える一級品のコンテンツになります。「キラキラ」ではなく「いきいき」と働く姿を見せましょう。特に投稿の「保存数」は、学生が後で見返したい有益な情報だと判断した証拠であり、重要なKPIとなります。
打ち手2:「ストーリーズ」を主戦場にする戦略転換
完璧なフィード投稿を週に1回作成する労力は、担当者を疲弊させます。それよりも、スマホ一つで気軽に投稿できるストーリーズを毎日更新する方が、はるかに効果的です。24時間で消える手軽さが、「今しか見られない」というライブ感を生み、学生との距離を縮めます。質問ステッカーで集まった質問に動画で答えたり、アンケート機能で会社の制度について意見を聞いたりすることで、アカウントは「企業からのお知らせ」から「学生との対話の場」へと変わります。
打ち手3:全社を巻き込む「ネタ集め」の仕組み化
採用は、採用担当者だけのものではありません。「#インスタネタ投稿」チャンネルを作れば、営業先で見つけた面白い風景、開発中の製品のチラ見せ、部署での和やかなランチ風景など、担当者一人では到底集められない多様なネタが自然と集まってきます。これにより、アカウントに登場する社員の顔ぶれも増え、「いろんな人が活躍している会社なんだ」という印象を与えることができます。良いネタを提供してくれた社員を称賛する文化を作ることが、この仕組みを成功させる鍵です。
1. 「#インスタネタ投稿」チャンネルの設立
・投稿されたネタは必ず採用担当者が拾い、感謝を伝える。
2. ストーリーズ機能のフル活用
・「質問ありますか?」「〇〇なのはどっち?」といったステッカー機能を使い、学生とのコミュニケーションを重視する。
・週に1〜2回、ライブ配信でリアルタイムQ&Aを実施するのも効果的。
3. 無理しない投稿サイクルの確立
・月曜:社員紹介、水曜:お仕事紹介、金曜:Q&Aなど、投稿テーマを曜日で固定化(ルーティン化)する。
・反応が良かった投稿のフォーマットを「型」として再利用する。
テーマ | フォーマル(信頼・公式) | カジュアル(共感・日常) |
---|---|---|
働くヒト(社員・カルチャー) |
① 社員の公式ポートレート ・新卒/中途社員インタビュー ・内定者紹介 ・マネージャー陣のキャリア論 ・1日の仕事の流れ(タイムスケジュール) |
② 社員の素顔スナップ ・社員のデスク周り紹介 ・出社/退勤時のルーティン ・社員のおすすめランチ ・「#〇〇な社員に聞いてみた」シリーズ(Q&A) |
働く環境・コト(制度・事業・オフィス) |
③ 事業・制度の公式ガイド ・自社サービス/商品の裏側紹介 ・福利厚生の徹底解説 ・知られざる社内制度 ・プロジェクトストーリー(成功事例) |
④ 日常の風景 ・会議室のホワイトボード(議論の跡) ・オフィスの好きな場所 ・給湯室のお菓子コーナー ・失敗談とそこからの学び |
打ち手4:「ハッシュタグ・リール」の戦略的活用
フォロワー以外に情報を届けるための「攻め」の施策です。ハッシュタグは、学生が情報を探す際の「検索キーワード」です。「#企業名」だけでなく、「#IT業界」「#成長できる環境」「#若手社員のリアル」など、学生が検索しそうなタグを複数組み合わせることで、まだ貴社を知らない潜在層に投稿を届けることができます。また、短い動画であるリールは、Instagramのアルゴリズム上、発見タブに表示されやすく、新規フォロワー獲得に非常に有効です。難しく考えず、社員の一問一答やオフィスのルームツアーなど、スマホで撮れる簡単な動画から始めてみましょう。
明日できることリスト
• アカウントのトンマナを1つ決めて(例:「親しみやすい後輩キャラ」)投稿文のテンプレート化を試す。
• 今週、社員5人に「#インスタネタ投稿」チャンネルへの投稿をお願いしてみる。
• ストーリーズで「質問ありますか?」ステッカーを使って、1投稿でもユーザーの反応を引き出す。
• 投稿テーマを「ヒト」「コト」「日常」の3軸で分けて日々当てはめながら1週間分構成してみる。
目指すべきは「インスタ映え」ではなく「インスタ分かり」
Instagram採用の成功は、どれだけ「キラキラ」しているかでは決まりません。どれだけ学生に「この会社で働くって、こういうことか」と、解像度高く理解してもらえるか(=インスタ分かり)にかかっています。
作られたイベントを探す必要はありません。貴社の会議室、社員のデスク、交わされる会話の中にこそ、未来の仲間を惹きつける最高のコンテンツが眠っています。完璧を目指さず、まずは貴社の「日常」を少しずつシェアすることから始めてみてください。