『待ちの採用サイト』から脱却する戦略的“メディアミックス”術
「自社サイトや採用ページだけでは見てもらえない。SNSや就活サイトでの露出が必要だ。」
どんなに素晴らしい商品を並べたお店(自社サイト)を開いても、大通り(SNSや就活サイト)に看板を出したり、チラシを配ったりしなければ、誰にもその存在を知ってもらえないのと同じ。
この問題の本質は、多くの採用担当者が、いまだに自社サイトを「待ち」のメディアとしてしか捉えられていないのに対し、あなたは、外に出ていく「攻め」のメディアの必要性を、明確に理解している点にあります。
その正しい戦略眼を、具体的な「実行計画」へと落とし込むための、戦略的メディアミックス術をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたの素晴らしいサイトは、“無人島”のままなのか?を診断しよう
- □ プル型メディアへの過信:
自社サイトという、学生が自ら来るのを待つ「プル型」メディアに依存しすぎている。 - □ プッシュ型メディアの不在:
SNSや広告といった、こちらから学生の日常に情報を届けに行く「プッシュ型」メディアが不足、あるいは存在しない。 - □ 導線設計の欠如:
各メディアが、点としてバラバラに存在し、学生を次のステップ(最終的には自社サイトでの応募)へと導く「線」として、設計されていない。 - □ チャネルごとの文脈無視:
全てのメディアで、同じ内容、同じトーンの、画一的な情報発信をしてしまっている。 - □ ターゲット解像度の低さ:
どのメディアに、自社が本当に会いたい学生がいるのか、解像度高く理解できていない。
これらは全て、採用活動を、候補者の視点に立った「旅(カスタマージャーニー)」として捉えられていないことが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「点」の活動から、「線」で繋ぐジャーニーへ
採用活動を、学生の心理変容に沿った「採用カスタマージャーニー」で捉え直し、各メディアの役割をマッピングします。
【採用カスタマージャーニーと、メディアの役割】
- 認知(Awareness) – “知ってもらう”段階
- 役割: とにかく広く浅く、社名や、何か面白いことをやっているという事実を、学生の視界に入れる。
- 主戦場メディア: 就活サイト(ナビサイト)、Web広告、SNS(X/Twitter, Instagram)
- 興味・関心(Interest) – “もっと知りたい”と思わせる段階
- 役割: 企業の思想や、働く人のリアルな姿を見せ、感情的な繋がりを創る。
- 主戦場メディア: YouTube(オウンドメディア)、採用ブログ(noteなど)、社員個人のSNS
- 比較・検討〜応募(Consideration/Application) – “ここで働きたい”と決意させる段階
- 役割: 詳細な情報を提供し、不安を解消し、応募への最後の一押しをする。
- 主戦場メディア: 採用サイト(オウンドメディアのハブ)、OB/OG訪問、口コミサイト
あなたの仕事は、このジャーニーを、学生が迷子になることなく、ワクワクしながら旅できるように、各メディアを連携させ、最高の体験を設計することです。
ステップ2:“無人島”を”巨大ターミナル駅”に変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「待ち」を「攻め」に転じる、4つのメディア活用術をご紹介します。
1. 「就活サイト(ナビサイト)」を、”巨大な交差点”と捉え、的確な”看板”を出す
・例:「ナビサイトには載せきれなかった〇〇プロジェクトの失敗談。全貌は採用サイトで公開中」
・採用サイト訪問者のエントリー率
・採用単価の最適化
2. 「SNS」を、”日常に溶け込むティザー広告”として活用する
・InstagramストーリーズでオフィスやQ&Aを配信
・全SNSプロフィールに採用サイトリンクを設置し、投稿末尾で誘導
・フォロワー数/エンゲージメント率
・「SNS見ました」という言及数
3. 「YouTube(オウンドメディア)」を、”信頼を醸成するドキュメンタリー劇場”にする
・例:「若手社員の一日Vlog」「役員×新入社員対談」「オンラインオフィスツアー」
・概要欄に採用サイト記事リンクを必ず設置
・視聴回数/視聴維持率/登録者数
・候補者のエンゲージメント向上
4. 全てのチャネルを連携させる「ハブ&スポーク」モデルの徹底
・ナビサイト、SNS、YouTubeを「スポーク」と設定
・一つの情報を各チャネルに最適化し発信しつつ、全てから採用サイトへ誘導
・各チャネルの役割/連携のスムーズさ
・メッセージの一貫性
💡 成功のための深掘り解説
打ち手1:就活サイト(ナビサイト)を“予告編”として活用する
ナビサイトは、いわば映画館の予告編です。予告編で、映画の全てを語ってはいけません。最も面白そうなシーンをチラ見せし、「続きは、劇場(採用サイト)で!」と、期待感を煽るのです。この“焦らし”のテクニックが、その他大勢の、全てを語り尽くす退屈な企業紹介との、決定的な差を生みます。
打ち手2:SNSを“日常に溶け込むティザー広告”として活用する
SNSで、企業がスーツを着て「弊社の強みは…」と語っても、誰も耳を傾けません。そうではなく、採用担当者が”中の人”として、「今日のランチ、激辛麻婆豆腐だった!辛いけど、うまい!」とつぶやく。その人間味あふれる日常にこそ、学生は親近感を覚え、「この人がいる会社、面白そうだな」と、自然に興味を抱くのです。
打ち手3:YouTubeを“信頼を醸成するドキュメンタリー劇場”にする
テキストや写真だけでは伝わらない、会社の「空気感」。これを伝える最強のメディアが、動画です。編集の効かない、社員の素の笑顔、活気のある会議の様子、少し緊張しながらも、自分の言葉で未来を語る若手社員の姿。この“生々しいリアル”が、時間をかけて、候補者の心の中に、企業への深い信頼と共感を育んでいきます。
打ち手4:全てのチャネルを連携させる「ハブ&スポーク」モデルの徹底
これが、採用マーケティング全体の”司令塔”となる、最も重要な戦略です。各メディアが、バラバラに、思いつきで情報発信するのをやめ、全ての情報が、最終的に、あなたの想いが最も詰まった採用サイトへと繋がるように、戦略的な“交通整理”を行う。この一貫した導線設計が、学生を迷わせることなく、スムーズに応募(ゴール)へと導くのです。
明日からできることリスト
- ・自社の診断タイプをチームで確認して共有
- チェックリスト項目を使い、自社がどの課題タイプに該当するかを判断し、その結果をチームで共有。
- ・就活サイト原稿を「予告編」仕様に書き換える案を考案
- 例:「〇〇プロジェクトの一部を限定公開中」「本編はこちらの採用サイトで」など、ナビサイトで見せる範囲の戦術案を複数作成。
- ・SNS投稿内容に「日常のティザー風コンテンツ」を計画
- 社員のオフィスのちょっとしたさりげない瞬間(昼食風景やちょっとしたひとこま)を投稿素材として準備し、自然に自社の雰囲気を伝えるプラン案を作成。
- ・YouTubeチャンネルコンテンツ案のプロットを作成
- 「若手×役員の30分対談」「1日のドキュメンタリー Vlog」など複数企画案を考え、簡易な台本や構成骨子を作ってみる。
- ・採用広報チャネルの導線図を描く
- 採用サイトをハブに、ナビサイト・SNS・YouTubeなどからどうつなぐか導線マップを簡単に手書きでも良いので描いてみる。これを用いて改善案をビジュアルで共有。
「完璧なサイト」を作ることではなく、「そこへ至る、抗いがたい旅」を演出すること
採用担当者は、もはや、自社の敷地内で、お客様を待つだけの店主ではありません。
あなたは、街の至る所(あらゆるメディア)に、魅力的な看板や、試食コーナーを設置し、本店(採用サイト)へと、人々を巧みに誘う、最高のマーケティング・ストラテジストなのです。
「自社サイトだけでは見てもらえない」
その正しい危機感こそが、あなたの会社の採用活動を、“待ち”の時代から、“攻め”の時代へと進化させる、最高のエンジンです。
そのエンジンを、今こそ、フル回転させる時です。