『掲載したのに、応募がない』就活ナビサイトの“無風”状態を打ち破る“口説き”の求人コピー術
「就活ナビサイトという、日本で一番人が集まる一等地に、高いお金を払ってお店(掲載枠)を出した。でも、店の前を多くの人が通り過ぎるだけで、誰も中(応募)に入ってきてくれない…」
その、鳴り物入りで出店したのに、閑古鳥が鳴いているかのような、寂しさと、焦り。かけたコストが、全く成果に結びつかない。
この問題の本質は、出店した「場所(就活ナビサイト)」が悪いのではなく、その店の「看板」や「メニュー」(求人原稿の言葉)が、その他大勢の店と何ら変わらず、学生の心を一瞬で掴むだけの魅力を持っていないという、極めて深刻な“伝え方”の課題にあります。
その退屈で、誰の記憶にも残らない「募集要項」を、学生が思わず足を止め、心を動かされ、応募ボタンを押してしまう「一通のラブレター」へと、その役割と中身を根本から書き換えるための、新しい時代の“口説き”の求人コピー術をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたのお店の前で、学生は立ち止まらないのか?を診断しよう
何千、何万という求人情報の中に、あなたの会社の情報が、完全に埋没してしまっている。その背景には、いくつかの典型的な”退屈な”原稿の特徴があります。
- □ 「べき論」・上から目線型:
「求める人物像:主体性があり、コミュニケーション能力の高い方」といった、企業が学生に”求めること”ばかりを、上から目線で列挙している。 - □ 魅力の抽象化・ポエム型:
「成長できる環境」「挑戦を歓迎する社風」「アットホームな雰囲気」といった、どの企業も使う、具体性のない”ポエム”のような言葉に終始している。 - □ 仕事内容・箇条書き型:
仕事内容が、「〇〇の企画立案」「△△のデータ分析」「□□の顧客対応」といった、無機質なタスクの箇条書きになっており、その仕事の”面白さ”や”やりがい”が、全く伝わらない。 - □ 「誰に」向けたか不明型:
全ての学生に良い顔をしようとするあまり、メッセージが八方美人になり、結果として、誰の心にも深く刺さっていない。 - □ 次への導線・不親切型:
応募ボタンがどこにあるか分かりにくかったり、「まずは、説明会にご参加ください」など、応募までのステップが、面倒で、複雑になっている。
これらは全て、学生を「口説き落とすべき、一人の人間」としてではなく、「処理すべき、不特定多数の応募者」として扱っていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「募集要項」から「学生へのラブレター」へ
求人原稿を書く前に、まず、その“たった一人の読み手(ペルソナ)”の顔を、ありありと想像します。
そして、その人だけに向けた、パーソナルな手紙を書く、という意識に切り替えます。
【コピーライティングの原則】
「企業の“ニーズ”を語るな。学生の“夢”に語りかけろ。」
あなたの仕事は、欠員を補充することではありません。一人の若者が、まだ気づいていないかもしれない可能性の扉を開け、最高の未来へと誘う、最高の“招待状”を書くことです。
ステップ2:“スルーされる求人”を“応募せずにはいられない求人”に変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「その他大勢」から「オンリーワン」へと、その存在感を変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 「タイトル」を、”運命の出会い”を予感させるものに変える
・学生の悩みや願望に直接語りかけるタイトルにする。
・例:「『ただの歯車で終わりたくない』あなたへ」「創業50年の安定企業で社内ベンチャー立ち上げメンバー募集」
・ターゲット応募比率
・SNSでのシェア数
2. 「仕事内容」を、”冒険の物語”として描く
・「未解決の社会課題に△△という武器で挑む」とロマンを語る。
・共に挑むチームメンバーも紹介する。
・職務理解度・入社意欲
・採用ミスマッチ低減
3. 「求める人物像」を、「仲間への呼びかけ」に変える
・「完璧なスキルは不要、理念に共感する同志を探す」と伝える。
・謙虚で誠実な姿勢のPR
・候補者からの共感・信頼
4. 「社員の声」という、最強の”証拠”を盛り込む
・少しネガティブも隠さず伝えることで人間味を演出。
・承諾理由での「人の魅力」言及率
・企業の透明性・信頼性向上
成功のための深掘り解説
打ち手1:「タイトル」を、”運命の出会い”を予感させるものに変える
求人広告の成否は、8割がタイトルで決まると言っても、過言ではありません。学生が、一日に何百と目にする求人情報の中で、あなたの会社のタイトルだけが、まるで自分にだけ語りかけられているかのような、強烈な“自分ごと”感を、生み出せるかどうか。その数十文字に、あなたの知恵と、愛と、そして、マーケティングの全てを、注ぎ込むのです。
打ち手2:「仕事内容」を、“冒険の物語”として描く
人は、「作業」には心を動かされませんが、「物語」には心を動かされます。あなたの会社が挑んでいる、困難な、しかし、尊いミッション。その物語の、空席になっている「主人公」の席を、学生に見せてあげるのです。「この椅子に座り、物語の主人公になりたい」と、彼らの冒険心を、最大限にくすぐること。それが、最高の動機付けとなります。
打ち手3:「求める人物像」を、「仲間への呼びかけ」に変える
「〇〇な能力を持つ人」という要求は、学生を「減点法」で評価する、冷たい響きを持ちます。しかし、「〇〇という想いを共有できる仲間」という呼びかけは、学生を「加点法」で迎え入れる、温かい響きを持ちます。スキルは、後からでも身につきます。しかし、価値観は、変えられません。最初に、価値観による、魂の握手を求めるのです。
打ち手4:「社員の声」という、最強の“証拠”を盛り込む
採用担当者が語る言葉は、どうしても「公式見解」というフィルターを通して見られます。そのフィルターを取り払い、学生の心に、ダイレクトに言葉を届けることができるのが、少しだけ先を歩く、先輩社員の“リアルな本音”です。良いことも、悪いことも、包み隠さず語るその声は、どんな美しいキャッチコピーよりも、学生の心を掴み、信頼を勝ち取ります。
明日からできることリスト
- ・自社求人原稿を典型パターンでチェックする
- 記事のステップ0にある“退屈な原稿特徴”(上から目線/抽象ポエム/仕事内容箇条書き etc.)を自社求人で照らして、どれが当てはまるかを洗い出す。
- ・タイトル案をいくつかリフレッシュする
- 次回の求人掲載を想定して、「〇〇職募集」的なタイトルを見直し、学生の願望や悩みに語りかけるタイトルを3案作る(例:「ただの仕事が欲しいならここじゃない」など)。
- ・仕事内容の“冒険物語”風に書き換える草案を作る
- 自社の仕事内容について、「最初に任せたいミッション」「この仕事を通じて解決したい社会課題」などを含むストーリー仕立ての案を1本準備。
- ・求める人物像を「仲間の呼びかけ」スタイルに直す
- 求人原稿中の「求める人物像」セクションを、「こんな仲間を探しています」「こういう価値観の人と働きたい」などの呼びかけ型に書き換える案を用意。
- ・社員の声を集めて見せ方を変える
- 若手社員一人または数名から「入社前に躊躇していたこと」「実際にやってみて驚いたこと」などの短い証言をもらって写真付きで求人ページに加える。
- ・求人フォームや応募導線を見直す
- “次への導線・不親切型”の問題を改善するために、応募ボタンの位置/説明会案内や応募までのステップが明確かどうかを自身でテストし、改善案を出す。できれば応募までのステップ数を減らす。
「完璧な募集要項」ではなく、「返信をせずにはいられない、一通のラブレター」
採用担当者は、求人サイトのフォーマットを埋める、単なる事務員ではありません。
あなたは、まだ見ぬ、しかし、運命で結ばれているはずの、たった一人の若者の心に、言葉の力だけで、火を灯す、言葉のプロフェッショナルなのです。
「応募がない」と嘆く前に、もう一度、あなたの会社が発信している「言葉」を見つめ直してみてください。
その言葉は、学生の心を、少しでも、温めていますか?ワクワクさせていますか?
その言葉は、あなた自身が、受け取って、嬉しいラブレターになっていますか?
その問いの先にこそ、あなたの求人広告が、ただの「情報」から、最高の出会いを生み出す「奇跡」へと、その姿を変える日が待っているはずです。