『流行りもの疲れ』を卒業する“自社らしさ”を極める本質的採用戦略
「TikTokが流行れば、TikTokを。メタバースが来れば、メタバースを。流行に乗って、必死に手を広げても、結局、自社に合った戦略でなければ、全く成果が出ない。そのことを、痛いほど痛感しました。」
まるで、流行りのファッションを、次から次へと試着してみるものの、どれも自分の体型(自社のカルチャー)には、しっくりこない。時間とお金を浪費した挙句、手元に残るのは、「自分に似合う服が、分からない」という、深い自己不信と、疲労感だけ。
この問題の本質は、あなたが新しい挑戦を怠っているのではなく、むしろ、その挑戦の“羅針盤”となる、あなた自身の「軸」が、まだ定まっていないという、極めて本質的な課題にあります。
その終わりのない「流行りもの疲れ」からあなたを卒業させ、採用担当者を「トレンドの追随者」から、自社の“らしさ”という揺るぎない軸を打ち立てる「ブランドの確立者」へと進化させるための、新しい時代の本質的採用戦略をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたの“最新ファッション”は、“ダサく”見えてしまうのか?を診断しよう
良かれと思って取り入れた、流行りの施策が、なぜ、成果に結びつかないのか。その背景には、いくつかの構造的な問題があります。
- □ 「手段」の目的化・症候群:
「TikTokで採用をやる」こと自体が目的化し、TikTokという手段を通じて、「誰に」「何を」伝えたいのか、という最も重要な戦略が抜け落ちている。 - □ 自社の”らしさ”・未定義型:
そもそも、自社の「カルチャー」や「強み」、そして「どんな人間が集まる場所なのか」という、”自社らしさ”が、明確に言語化・定義されていない。 - □ リソース・分散型:
限られた予算と人員を、あれもこれもと、複数の新しいチャネルに薄く、広く分散させてしまい、どのチャネルでも、中途半端な成果しか出せていない。 - □ 付け焼き刃・低クオリティ型:
流行りに飛びついたは良いものの、そのプラットフォームを使いこなすスキルや、質の高いコンテンツを企画するノウハウがなく、”とりあえずやってみました”感のある、素人っぽいアウトプットになっている。 - □ 短期成果・期待型:
新しい施策を始めれば、すぐに魔法のような成果が出るはずだと期待し、数ヶ月で結果が出ないと、「この手法は、うちには合わなかった」と、早々に見切りをつけてしまう。
これらは全て、自社の“土台”が固まる前に、流行りの“装飾”にばかり、気を取られてしまっていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「流行」の服を脱ぎ、「自分」という名の服を着る
「全ての答えは、社内にある」
この、極めてシンプルで、しかし、力強い思想に立ち返ります。他社の成功事例や、世の中のトレンドを追いかけるのを、一度、完全にやめてみましょう。そして、自社の“内側”へと、深く、深く、潜っていくのです。
【自社の“らしさ”を発掘する、3つの問い】
- WHY(我々の存在意義は何か?): なぜ、私たちの会社は、この世に存在するのか?利益を出すこと以外に、どんな価値を、社会に提供しているのか?
- WHO(我々は何者か?): 私たちは、どんな人間の集まりなのか?社内で、称賛される行動や、価値観は何か?逆に、絶対に受け入れられない行動は何か?
- HOW(我々の戦い方は?): 私たちは、どのようにして、価値を生み出しているのか?仕事の進め方における、独特の”儀式”や”文化”、”こだわり”は何か?
この3つの問いに対する答えこそが、どんな流行にも左右されない、あなたの会社の採用活動の、揺るぎない「憲法」となります。
ステップ2:“自社らしさ”を、“最強の採用力”へと変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「流行りもの」を「本物」に変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 採用理念(Hiring Philosophy)の言語化と社内合意
・経営会議で承認し、全面接官に共有。
・意思決定のスピードと一貫性
・採用担当者の自信と納得感
2. チャネル・フィットの徹底的な吟味
・例:堅実な会社がTikTokに参入すべきか再考する。
・応募者の質の変化
・工数・コストの削減
3. 「一点突破」戦略で資源集中
・例:職人気質なら技術ブログ、社長のカリスマならYouTubeへ集中投下。
・ブランドの独自性と専門性向上
・熱狂的ファンの獲得
4. 成果の定義を“自社の物差し”で再設定
・例:博士課程の学生から年1応募=成功と定義。
・担当者の心理的負担軽減と満足度
・健全な自己評価文化の醸成
成功のための深掘り解説
打ち手1:「採用理念」の言語化と、社内合意
これが、全ての流行り廃りから、あなたの採用を守る、最強の錨(いかり)です。この揺るぎない理念があれば、次にどんな新しいSNSが登場しようと、「待てよ、そのツールは、私たちの理念を体現するのに、本当にふさわしいだろうか?」と、冷静に判断することができます。これは、ブレない採用活動の、全ての土台となります。
打ち手2:「チャネル・フィット」の徹底的な吟味
流行りの服が、自分に似合うとは限りません。それと同じで、流行りのチャネルが、自社に合うとは限りません。自社の“体型(カルチャー)”と、“着たい服(伝えたいメッセージ)”を深く理解し、それに最も似合う“ファッション(チャネル)”を、冷静に、そして、戦略的に選ぶ。この見極めこそが、無駄な投資を防ぎ、成果を最大化する、プロの仕事です。
打ち手3:「一点突破」戦略。最も“らしい”チャネルに、資源を集中投下する
限られた資源を持つ者は、戦線を拡大してはいけません。勝利の可能性が最も高い、たった一点の戦場に、全ての戦力を集中させる。これが、弱者の戦略の鉄則です。「あれもこれも、そこそこ」の会社は、誰の記憶にも残りません。「〇〇(特定のチャネル)と言えば、あの会社だよね」という、圧倒的な“第一想起”を、たった一つの領域でいいから、確立するのです。
打ち手4:「成果」の定義を、“自社の物差し”で再設定する
他人の物差しで自分の価値を測り始めると、人は、必ず不幸になります。採用活動も同じです。「競合は、TikTokで100万回再生されたらしい」と、落ち込む必要は全くありません。あなたの会社にとっての「採用の成功」とは、一体、何なのか?その定義を、あなた自身の言葉で、組織に提示すること。その瞬間に、あなたは、他社との不毛な比較競争から解放され、自らの信じる道を、まっすぐに進むことができるのです。
明日からできることリスト
- ・流行施策を一旦停止して顧客(学生)と社内の声を拾う
- 過去 3 ヶ月で試した流行りのチャネル/施策をリストアップし、どれが成果が出ていて、どれが手応え薄かったかを振り返る。加えて、学生/候補者のフィードバックを聞く(アンケートなど)。
- ・社内で「WHY/WHO/HOW」ワークショップを企画する
- 採用担当者+現場社員で 1〜2 時間ほど、「我々はなぜ存在するのか」「どんな人たちが社内で良く称賛されるか」などを話し合い、自社らしさを言語化するドラフト案をいくつか出してみる。
- ・チャネル評価基準を定義する
- 新しいチャネルを検討するときに使う評価軸を作る(例:理念との整合性/ペルソナの利用可能性/運用コスト/期待見込み/長期可能性など)。それを用いて現在使っているチャネルを見直し、削減または集中先を決める案を作る。
- ・注力チャネルをひとつ選んで集中施策を準備する
- 一点突破戦略として、現状で最もポテンシャルを感じるチャネルを選び、そのチャネルでのコンテンツ制作/投稿スケジュール/プロモーション案など濃く運用するプランを草案で立てる。
- ・成果の定義を自社物差しで見直すため KPI を見直す
- 他社比較指標(いいね数・再生数など)から、自社にとっての重要指標(例:応募質/内定後の定着/カルチャーフィット度など)へのフォーカスを切り替える案を検討する。
- ・短期スプリントで「自社らしさ」が現れるコンテンツを一つ制作してみる
- たとえば「社員の日常のこだわり」「社内でしかやっていない慣習」など、自社特有の文化が伝わるショートコンテンツを一つ作って発信し、反応を見てみる。
「流行の最先端を走る」ことではなく、「自社の“らしさ”という、揺るぎない道を歩む」こと
採用担当者は、次から次へと現れる、流行りの服を追いかける、ファッション評論家ではありません。
あなたは、自社という人間にとって、最も似合う、最高の服を仕立てる、最高のテーラーなのです。
流行は、必ず、廃れます。
しかし、その会社が持つ、本質的な“らしさ”は、決して、色褪せることはありません。
外に答えを求めるのをやめ、あなたの会社の、そして、あなた自身の”内なる声”に、耳を澄ませてみませんか?
その声こそが、どんな流行りのノウハウよりも、雄弁に、そして、力強く、あなたの進むべき道を、照らしてくれるはずです。