合同説明会で『素通りされない』ために
「合同説明会に出展しても、学生の列ができるのは大手企業ばかり。うちのブースの前を素通りされると、会社の存在価値まで否定されたような気分になります。」
知名度や規模がモノを言う「集客合戦」というレッドオーシャンに、丸腰で挑んでいる状態なのかもしれません。その消耗戦から脱却し、合同説明会を「不特定多数に認知される場」から「特定の学生と深く繋がる運命の出会いの場」へと再発明するための、具体的な戦略と戦術をご提案します。
ステップ0:まず、自社の出展スタイルを診断しよう 🔍
「素通りされる」ブースには、いくつかの共通した原因が潜んでいます。ご自身のブース運営がどれに当てはまるか、振り返ってみましょう。
- □ 神頼み出展型:
事前の告知活動を一切せず、「会場に行けば誰か来るだろう」と当日の偶然の出会いに期待してしまっている。 - □ 鉄壁の要塞型:
机を前に置いて採用担当者が座っているため、学生との間に物理的・心理的な壁ができており、話しかけづらいオーラを放っている。 - □ パンフレット棒読み型:
ブースに座ってくれた学生に対し、Webサイトに書いてあるような会社概要を一方的に説明するだけで、対話が生まれていない。 - □ お土産目当てホイホイ型:
豪華なノベルティグッズで学生を集めているが、中身に興味のない「グッズハンター」ばかりで、有効な母集団に繋がっていない。 - □ 一期一会型: 名刺や連絡先は交換するものの、イベント後のフォローが遅れたり、画一的なお礼メールを送るだけで、せっかくの縁を次へと繋げられていない。
これらは全て、「待ち」の姿勢が生み出す悪循環です。この受け身の姿勢を能動的に転換することが、成功への第一歩となります。
ステップ1:思想をアップデートする。「出展」から「出撃」へ
合同説明会は、ブースという「店舗」を構えてお客様を待つ場ではありません。未来の仲間を探しに、こちらから仕掛けていく「戦場」です。そして、その戦いは、イベント当日よりずっと前から始まっています。
- 目的を「認知拡大」から「個別接触」へ再定義する(WHY)
- NG:「多くの学生に、まず社名を知ってもらう」
- OK:「事前にアプローチしたターゲット学生と直接会い、オンラインでは伝えきれない”人”や”社風”の魅力を感じてもらう」
- → 合説は、オンラインでの出会いをオフラインでの”人間関係”に深化させるための中間地点と位置づけます。
- ターゲットを「会場の全学生」から「会うべき10人」へ絞り込む(WHO)
- NG:「会場にいる意欲の高い学生」
- OK:「出展企業リストを見て、事前に〇〇業界を志望している学生。特に、弊社の技術と親和性の高い△△を研究している学生。」
- → 全員に好かれようとしないこと。特定の学生に「私のためのブースだ」と思わせることが重要です。
ステップ2:行列のできるブースに勝つための具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「素通り」を「思わず立ち止まる」に変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 「素通りさせない」ブースUX/体験設計
・「〇〇な人、3分だけ話聞きませんか?」などのキャッチコピーを掲示。
・製品や技術のデモ機を持ち込み、体験型コーナーを設置。
・着席数/率
・ターゲット学生の着席比率
2. 「イベント前」の集客・予約戦略
・SNSで「〇〇大学OBが待っています!」と具体的に告知。
・予約者限定の特典(特別面談パス、社員ランチ確約など)を用意。
・スカウト経由訪問者数
・SNS経由訪問者数
3. 「惹きつける」担当者の役割分担とトーク術
・「何を探してるの?」など学生主語で会話を開始。
・「君の経験、うちならこう活かせるよ」と個別フィードバックを実施。
・学生アンケート満足度
・担当者指名数
4. 「イベント後」の即時フォローアップ体制
・学生の興味度A/B/Cに応じてフォロー手法を変える。
・合説学生限定の少人数セミナーや座談会を翌週開催。
・イベント後の選考移行率
・次イベント参加率
💡 成功のための深掘り解説
打ち手1:「素通りさせない」ブースUX/体験設計
学生がブースの前を通り過ぎる時間は、わずか3秒と言われています。その3秒で「お?」と思わせる仕掛けが必要です。机を挟んで座っている担当者は「審査員」のように見え、学生を萎縮させます。机をなくし、オープンな空間で立ち話をするだけで、カフェのような気軽な対話の場に変わります。また、「会社説明」ではなく「体験」を提供すること。製品に触れる、簡単なワークを解くなど、学生が手を動かし、頭を使う仕掛けは、記憶に強く残ります。
打ち手2:「イベント前」の集客・予約戦略
合説の成功は、当日までの準備で8割決まります。事前に「あなたに会うために、このイベントに来ました」というメッセージを伝えることで、学生にとって貴社ブースは「その他大勢」から「目的地」へと変わります。特に、会える社員の顔や専門性を具体的に告知するのは有効です。「あの人に会ってみたい」という動機は、企業名への興味を凌駕します。
打ち手3:「惹きつける」担当者の役割分担とトーク術
学生は「企業の説明」を聞きに来ているのではなく、「自分の未来」を探しに来ています。一方的に会社の話をするのではなく、まずは学生の話を聞く「カウンセラー」になること。「どんな軸で会社を探してるの?」「学生時代に一番頑張ったことは?」と問いかけ、その答えに対して「それなら、うちの〇〇という仕事が向いてるかもね」と、キャリアの選択肢を提示してあげるのです。この「自分を理解してくれた」という感動が、企業への強い興味に繋がります。
打ち手4:「イベント後」の即時フォローアップ体制
合説は、学生にとって情報の洪水です。翌日には、貴社ブースで話した内容のほとんどを忘れてしまいます。記憶と熱量が残っている「当日中」に個別連絡をすることが鉄則です。「先ほど〇〇について熱心に質問してくれましたね」のように、会話の内容に触れる一文があるだけで、一斉送信メールとの差別化は歴然です。そして、最も熱量の高い学生には、すぐに特別な次のステップを用意すること。スピード感が、大手企業との競争において最大の武器となります。
明日からできることリスト
- ・ブースのレイアウトを見直し、机を取り払ってオープンな構造に変更
- ・SNSやメールなどで、「来場者に会う社員の顔と専門領域」を事前告知する投稿を出す
- ・ブースで話すときに「学生の話を聞く」導入トークのテンプレートを準備
- ・合同説明会当日中に話した学生へ「○○について話せてよかったです」などの個別フォローを送る
「行列」ではなく、未来のエースたった一人との「固い握手」
合同説明会という戦場で、知名度を武器に戦う大手企業と同じ戦略をとる必要は全くありません。
彼らが絨毯爆撃で「量」を確保するなら、こちらは狙撃銃で「質」を狙い撃ちしましょう。
ブースを素通りしていく99人に心を痛めるのではなく、自社の未来を本気で考える「たった一人の学生」の足を止め、目を見て語り、心を動かすこと。そして、イベントの最後にその学生と「次の選考で待ってるよ」と固い握手を交わすこと。それこそが、知名度では測れない、貴社だけの本当の勝利です。