『地元有名企業・公務員』の牙城を崩す“貢献の質”再定義
「『地元に貢献したい』と熱く語る、優秀な学生ほど、県庁や市役所、地元の有名企業に流れてしまう。うちが、世界に誇る技術を持つニッチな優良企業だと、気づいてもらえさえすれば…。その前に、選択肢から外されているのが悔しい。」
地元のスター選手が、誰もが知る王道の名門チーム(公務員や有名企業)にばかり入団し、実力はあっても無名な自分たちのチームには見向きもしてくれない。そのもどかしさと、正当に評価されないことへの悔しさ。
この問題の本質は、あなたの会社に魅力がないのではなく、学生が持つ「地元貢献」という言葉の“解像度”が、極めて低いことにあります。彼らにとって、「地元貢献」とは、最も分かりやすい象徴である「行政」や「地元の顔である大企業」で働くこと、という極めて限定的なイメージに留まっているのです。
その固定観念という名の厚い壁を打ち破り、採用担当者が「地元貢献の新しい定義を提示するオピニオンリーダー」へと進化することで、知名度ではなく「貢献の“質”」で、優秀な学生を惹きつけるための、新しい採用戦略をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたは”地元のスター”に選ばれないのか?を診断しよう
優秀な地元志向の学生から、“その他大勢”として扱われてしまう背景には、いくつかの戦略的な見落としがあります。
- □ 「地元貢献」の解釈・固定観念型:
「世界を相手に外貨を稼ぎ、地元に税金を納めること」が、どれだけ偉大な地元貢献であるか、というBtoB企業ならではの貢献の形を、学生が理解できる言葉で伝えられていない。 - □ 知名度・信頼性の壁:
学生本人だけでなく、その意思決定に大きな影響を与える「親」や「大学教授」が安心する、分かりやすい“看板”がないことの不利を、過小評価している。 - □ 魅力の“翻訳”・不足型:
「世界シェアNo.1のニッチ技術」という魅力を語るだけで、その技術が「この田舎町から、世界を動かしている」という、地元愛をくすぐるストーリーに翻訳できていない。 - □ 接点の遅さ・少なさ型:
就職活動が本格化する大学3年生の後半になって、初めて学生にアプローチしている。その時点では、すでに彼らの第一志望は固まってしまっている。 - □ ロールモデル・不在型:
「地元で、世界と繋がりながら、こんなに面白い仕事をしている」という、学生が憧れるような、少しだけ年次の近い、魅力的な若手社員の存在が見えていない。
これらは全て、既存の「地元貢献」というイメージの枠内で戦ってしまっていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「貢献」の定義を、塗り替える
まず、競合が提供する「地元貢献」の価値を定義し、それに対する自社のユニークな価値を明確にします。
- 公務員の「地元貢献」 → 安定 公平性 住民サービス(守りの貢献)
- 地元有名企業の「地元貢献」 → 雇用 地域の顔 経済(マクロ)(維持の貢献)
- 我が社の「地元貢献」 → 世界に誇る技術を、この地から 外貨を稼ぎ、地域経済を潤す 個人の裁量で、世界と地元を繋ぐ (攻めの貢献)
私たちの仕事は、この「第三の貢献の形」を、学生にとって魅力的で、現実的なキャリアの選択肢として提示することです。
ステップ2:“見えない魅力”を”揺るがぬ第一志望”に変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「選択肢にすら入らない」状況を、「ここしか考えられない」に変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 「地元貢献の“再定義”」をテーマにしたイベント開催
・若手市役所職員、有名企業社員、自社若手社員を登壇者に招く。
・採用担当者は中立的なモデレーターに徹する。
・イベント参加者満足度と理解度変化
・地元メディア掲載回数
2. 「グローカル(Glocal)」な魅力を伝えるストーリーテリング
・海外出張や外国籍社員との協業を見せる。
・「地元にいながら世界を相手に働ける」独自価値を訴求。
・「世界」「技術」関心層からの応募増
・ブランドイメージの刷新
3. 「低学年」からの刷り込み戦略(キャリア教育)
・テーマは「就活」でなく知的好奇心を刺激するものに設定。
・高校への出前授業も積極的に実施。
・本選考での認知度・志望度
・地域社会への貢献・認知度向上
4. 「行政・有名企業」との連携(Co-Branding)戦略
・有名企業と学生向け技術コンテストやワークショップを共催。
・同じ舞台に立つことで「対等」な印象を形成。
・ブランド調査での信頼性・将来性スコア
・行政・他社との関係構築
成功のための深掘り解説
打ち手1:「地元貢献の“再定義”」をテーマにしたイベント開催
これは、自社を売り込むのではなく、「議論の場」そのものを主催することで、知的なリーダーシップを発揮する戦略です。様々な立場の若手社会人が、それぞれの「地元貢献」を語る場を設けることで、学生は自らの固定観念を自覚し、視野を広げることができます。その中で、あなたの会社の社員が最も挑戦的で、ユニークな貢献の形を語ることができれば、学生の心は自然と動きます。
打ち手2:「グローカル(Glocal)」な魅力を伝えるストーリーテリング
「地方=ドメスティックで退屈」という、学生の無意識の思い込みを覆すための情報発信です。「ここ(地元)でしか作れないものが、世界(グローバル)で待たれている」という物語は、地元への愛着と、世界への挑戦心という、若者の二つの欲求を同時に満たす、極めて強力なメッセージになります。この“ギャップ”こそが、あなたの会社の最大の魅力なのです。
打ち手3:「低学年」からの刷り込み戦略(キャリア教育)
多くの学生の第一志望は、就活が始まるずっと前、子供の頃からの刷り込みや、親からの影響で、無意識のうちに形成されています。その“無意識の領域”に、早期からアプローチする、長期的なブランディング戦略です。「就活」というフィルターがかかる前に、純粋な知的好奇心や、地元への誇りとして、あなたの会社の存在をインプットしておく。これが、数年後に大きな差となって現れます。
打ち手4:「行政・有名企業」との連携(Co-Branding)戦略
もし、自社のブランド力が足りないなら、ブランド力のある組織と“協業”し、その力を借りるのが賢明な戦略です。行政や有名企業と同じイベントに登壇することで、あなたの会社は、学生の頭の中で、彼らと「同格」の存在として認識されるようになります。敵の土俵で戦うのではなく、敵を自らの土俵(イベント)に招き入れ、パートナーとして共演するのです。
明日からできることリスト
- ・地元の学生が「地元貢献」と聞いた時に思い浮かべるであろうイメージ(例:公務員・有名企業)を社内で洗い出してみる。
- ・社員(とくに若手)に「あなたがこの会社で“地元のためにやっていること”」を一つ挙げてもらい、その話を社内外広報用の記事スケルトンとしてまとめておく。
- ・次回大学訪問やキャリアセミナーで、「世界を相手に技術で勝負する地元企業」というテーマで話せる素材(成功事例・製品・プロジェクトなど)を3つピックアップして準備しておく。
- ・高校や大学の低学年向けイベントで「地元の技術者の働き方」や「グローバルとローカルをつなぐ仕事」の講師・講演機会を探してみる、または問い合わせてみる。
- ・地元自治体や有名企業との共催イベント案を1つ企画してみる(テーマ例:「地元貢献と技術革新」「若手が選ぶ未来の地方」など)を立案し、関係各所に協議できる草案を作成。
「有名な会社」になることではなく、「地元で最も”面白い未来”を語れる会社」になること
採用担当者は、自社の知名度の低さを嘆く、一人の社員ではありません。
あなたは、地元というフィールドの、まだ誰も気づいていないポテンシャルと、新しい働き方の可能性を、誰よりも熱く、そして論理的に語る、地域の未来のストーリーテラーなのです。
学生が県庁や有名企業を選ぶのは、そこに「安定した未来」が見えるからです。
ならば、あなたは、彼らに「予測不能で、しかし、圧倒的にエキサイティングな未来」を提示すること。
その物語の面白さで、学生の心を掴んだ時、あなたの会社は、単なる「ニッチな優良企業」から、「地元の希望を背負う、最高の挑戦の舞台」へと、その姿を変えるはずです。