『社名すら知られていない』絶望を突破する“認知”獲得ゲリラ戦術
「まず学生に“会社名すら知られていない”ことが最大の壁。」
大海原に漕ぎ出した、一艘の無名の小舟。周りには、巨大な豪華客船(大手企業)が、眩い光を放ち、多くの人々を惹きつけている。こちらの存在は、誰にも気づかれず、ただただ波に揺られているだけ。その、スタートラインにすら立てていないかのような。
この問題の本質は、あなたの会社に魅力がないのではなく、その魅力が、まだ誰にも「発見」されていない、という、極めてシンプルな事実にあります。そして、その発見の機会を、「待ち」の姿勢でただ待っているだけでは、永遠に訪れません。
その絶望的な「無名」という状況を、嘆くのではなく、「これから、どんな物語でも描ける、真っ白なキャンバス」と再定義し、大手企業には真似できない、低コストで、しかし、深く心に突き刺さる「ゲリラ戦術」で、未来の仲間に“発見”してもらうための、新しい採用戦略をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたの会社は”存在”すら認識されないのか?を診断しよう
「知られていない」という課題の裏には、情報発信における、いくつかの根本的な問題が潜んでいます。
- □ 待ちの採用・孤島型:
採用サイトを作っただけで、そこに学生が偶然たどり着くのを、ひたすら待っている。 - □ 情報発信・ゼロ型:
会社の公式な活動として、採用に繋がるような情報発信(プレスリリース、SNS、イベント等)が、そもそも全く行われていない。 - □ 大手と同じ戦場・消耗型:
数少ない予算を、大手企業がひしめく巨大な求人ナビサイトや合同説明会に投下し、その他大勢の中に完全に埋没している。 - □ メッセージ・内向き型:
発信する情報が、業界の専門家や顧客向けのものばかりで、予備知識のない学生が読んでも、全く面白さが伝わらない。 - □ 社員の魅力・未活用型:
社内にいる、最高の”広報塔”であるはずの、魅力的な社員たちの知見や物語が、全く社外に発信されていない。
これらは全て、「良い会社であれば、いつか誰かが見つけてくれるはずだ」という、幻想に囚われていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「社名を売る」から「物語を売る」へ
「トロイの木馬」戦略を採用します。
学生は、「知らない会社の名前」には警戒し、門を開けません。しかし、「自分のためになる、面白い情報」という名の、巨大な木馬であれば、喜んで城門を開けてくれるでしょう。そして、その木馬の中から出てきたのが、実はあなたの会社の社員だった、という状況を作り出すのです。
あなたの仕事は、社名を売り込むことではありません。学生が、思わず“発見”し、夢中になってしまうような、最高の「物語」や「学び」という名の“木馬”を創り出すことです。
ステップ2:“無名”を“知る人ぞ知る存在”へと変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「誰?」を「あの会社のことね!」に変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 「社員個人」をハブにした、専門領域からの情報発信
・会社はプロフィールの所属表記のみに留める。
・個人のファンから「この人の会社は?」への自然遷移を設計。
・個人SNSのフォロワー/エンゲージメント率
・「〇〇さんの記事を読んで」の応募数
2. 「Giveファースト」の、お役立ちコンテンツ/イベント戦略
・例:「初めての機械学習」「伝わる文章の書き方」。
・当日は自社PRを一切しない(Giveに徹する)。
・参加者の継続接点化(タレントプール化)
・「専門性」「貢献性」イメージの確立
3. 「ニッチメディア」への戦略的プレスリリース/情報提供
・読者価値の高い技術成果/取り組みを編集者へ売り込む。
・大手紙より「業界のあの人が読む」媒体に露出を狙う。
・掲載記事経由の流入数と質(CVR)
・専門分野における権威性の向上
4. 大学研究室・サークルへの“地道な”リレーション構築
・技術顧問・作品レビュー会・ピザ差し入れ等で貢献。
・顔と名前が一致する、濃密な関係性を継続構築。
・教授/学生リーダー経由の口コミ紹介
・共同研究/技術連携への発展件数
成功のための深掘り解説
打ち手1:「社員個人」をハブにした、専門領域からの情報発信
これが、知名度のない企業が使える、最も強力なゲリラ戦術です。「〇〇株式会社」という無機質な看板には誰も興味を示さなくても、「〇〇という、すごい技術者」という、生身の人間の魅力には、多くの人が惹きつけられます。社員一人ひとりが、会社の魅力を発信する”小さな灯台”となる。その無数の灯りの集合体が、やがては会社全体の存在を、暗闇の海に浮かび上がらせるのです。
打ち手2:「Giveファースト」の、お役立ちコンテンツ/イベント戦略
「応募してください」とお願い(Take)する前に、まず、相手にとって価値のあるものを、惜しみなく与える(Give)。この“GIVE & TAKE”ではなく、”GIVE, GIVE, GIVE, & … GET”の精神が、学生との間に、広告では決して築けない、深い信頼関係を生み出します。「あの有益なイベントをやっていた、あの会社か」と、感謝の記憶と共に、社名が思い出されるのです。
打ち手3:「ニッチメディア」への戦略的プレスリリース/情報提供
大海原(大手メディア)で、一匹の魚も釣れないなら、魚影の濃い、小さな川(ニッチメディア)に行きましょう。あなたの会社のユニークな取り組みは、大手メディアにとってはニュースにならなくとも、専門メディアにとっては「喉から手が出るほど欲しい、最高のネタ」かもしれません。そのメディアの読者である、質の高いターゲット層に、“編集部お墨付き”の記事として、あなたの会社の存在を届けることができるのです。
打ち手4:大学の研究室やサークルへの、“地道な”リレーションシップ構築
空中戦(Web)だけでなく、最も確実な地上戦も、同時に展開します。未来のスター選手が眠る、高校の野球部(研究室やサークル)に、足繁く通うスカウトのように。一人ひとりと顔の見える関係を築く、この地道で、人間臭い活動こそが、デジタルだけでは決して得られない、強固なエンゲージメントを生み出し、数年後の採用活動を、圧倒的に有利にするのです。
明日からできることリスト
- ・ペルソナや専門コンテンツテーマの仮案を一つ作成する
例:「機械学習に興味ある学生向けに、社員が書いた技術ブログ記事案」 - • 社員エースを一人ピックアップし、発信サポート計画を小さく開始する
初稿案として「〇〇さんの記事をnoteに書きます。拡散の仕組みも用意済み」といったテンプレート作成。 - • 無料イベント(Give型)案をひとつ立案する
テーマ例として「初心者向けプログラミング体験ワークショップ」などを考え、案の概要を作成。 - • ニッチメディアリストを3つ作る
ターゲット学生層が読む技術ブログや業界メディアを3つピックアップし、掲載交渉を行える候補としてストック。 - • 大学サークルや研究室への接点リストを作成する
近隣か関係性のありそうな研究室・サークルを3〜5件リストアップし、直接関係を築くための訪問案などをメモ。
「誰もが知る“有名な会社”」ではなく、「知る人ぞ知る“伝説の会社”」
採用担当者は、自社の知名度のなさを嘆く、広報担当者ではありません。
あなたは、まだ世に発見されていない、最高の物語と才能(自社)を持つ、インディーズレーベルのプロデューサーなのです。
マスに媚びる必要はありません。
自分たちの音楽(価値観)を信じ、それを最も深く愛してくれる、熱狂的なファン(未来の仲間)を、一人、また一人と、着実に増やしていく。
「〇〇社って知ってる?」「知らない」「マジで?あの、めちゃくちゃ面白い〇〇をやっている会社だよ」。
そんな、熱のこもった口コミで、あなたの会社の名前が語られるようになった時、あなたは、知名度の壁を、遥か彼方に超えているはずです。