『誰も来ない採用サイト』という“陸の孤島”をなくす“集客”導線設計
「半年かけて、魂を込めて採用サイトを作った。でも、誰も見に来てくれなければ、それは存在しないのと同じだ…」
無人島にたった一人で豪華なレストランを建ててしまったシェフ。最高の料理(コンテンツ)を用意しても、そこへ続く道(アクセス経路)がなければ、誰にもその価値は届かない。その空回りする努力と、静まり返ったウェブサイトを前にした時の深い絶望感。
この問題の本質は、あなたが作ったサイトの魅力が足りないのではなく、採用サイトを「作ること」をゴールにしてしまい、そこへ「人を呼び込むこと」を、全く別の仕事として捉えてしまっているという、プロセスの分断にあります。
採用サイトを「陸の孤島」から、あらゆる学生が訪れる「巨大なターミナル駅」へと変貌させるための、より網羅的で、戦略的な打ち手を再構築いたしました。
ステップ0:なぜ、あなたの“レストラン”には、誰も来ないのか?を診断しよう
素晴らしい採用サイトが、誰にも発見されずにインターネットの海に漂っている。その背景には、いくつかの集客戦略上の欠陥があります。
- □ 看板なき開店型:
採用サイトは完成したが、その存在を、他のどの場所(求人媒体、SNS、説明会資料など)でも、告知・宣伝していない。 - □ 待ちの姿勢・祈祷師型:
「良いサイトを作れば、いつかGoogleが上位に表示してくれるはずだ」と、神頼みのような姿勢で、奇跡が起きるのを待っている。 - □ 一方通行・ブロードキャスト型:
SNSなどで情報発信はしているが、「詳しくはこちら」といった、採用サイトへの誘導(Call to Action)が全くない。 - □ コンテンツ陳腐化・更新停止型:
サイトが、一度作ったら更新されない「静的なパンフレット」になっており、一度訪れた学生が、再び訪れる理由がない。 - □ ターゲット不在・無差別砲撃型:
そもそも、どんな学生に、このサイトを見てほしいのかが明確でないため、どこで、どんなメッセージを発信すれば良いか分かっていない。
これらは全て、採用サイトを「ハブ(中心基地)」として、そこへ繋がる「スポーク(経路)」を設計するという、マーケティングの基本視点が欠けていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「目的地」だけでなく、「そこへの交通網」を設計する
採用マーケティングの世界には「PESOモデル」という、情報流通の全体像を捉えるための、強力なフレームワークがあります。あなたの採用サイト(Owned Media)をハブとして、他の全てのメディアを、そこへ繋がる交通網として設計します。
【採用サイトへの4つの交通網(PESOモデル)】
- Paid Media(広告): お金を払って人を集める道。(例:ナビサイト、Web広告、SNS広告)
- Earned Media(評判): 第三者の信頼を借りて人を集める道。(例:メディア掲載、SNSでの口コミ)
- Shared Media(共感): 社員やファンの力を借りて人を集める道。(例:社員個人のSNS発信、リファラル)
- Owned Media(自社): 自分たちの物語で、人を惹きつけ続ける道。(例:採用サイト、ブログ、YouTubeチャンネル)
あなたの仕事は、これらの交通網を戦略的に組み合わせ、常に円滑な交通量を確保する、最高の「都市計画家」になることです。
ステップ2:“陸の孤島”を”人気観光地”へと変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「アクセス数ゼロ」のサイトを、学生が絶えず訪れる場所に変える、より強力になった4つの打ち手をご紹介します。
1. 【Paid】ナビサイトを”予告編”として、本サイトへ誘導する
・例:「ナビには載せきれなかった〇〇プロジェクトの最大の失敗談—続きは採用サイト『私たちの物語』で」
・採用サイト訪問者のエントリー率
・採用単価(CPA)の最適化
2. 【Owned】YouTubeを”会社の素顔”を見せる劇場にする
・全動画の概要欄に、関連する採用サイト記事へのリンクを設置。
・視聴回数・視聴維持率・登録者数
・候補者エンゲージメント
3. 【Shared】「社員個人」を最強の”インフルエンサー”にする
・Qiita/note等で記事執筆時に、自然な導線で求人・社員記事へ誘導。
・リファラル応募数
・顔の見える化によるEB向上
4. 【Earned】「Giveファースト」のコンテンツで、”評判”を創る
・記事末で「興味があれば働き方も覗いてみてください」と採用サイトへ誘導。
・閲覧/シェア等のエンゲージメント
・専門性・貢献性イメージの向上
成功のための深掘り解説
打ち手1:【Paid】ナビサイトを”予告編”として、本サイトへ誘導する
多くの企業が、ナビサイトを“完結した情報提供の場”として使っています。これは、非常にもったいない。ナビサイトは、あくまで不特定多数との「最初の接点」です。そこで全てを語るのではなく、最も興味を惹く“謎”や”問いかけ”を残し、「答えは、Webで」と、自社が完全にコントロールできる採用サイト(本丸)へと誘導する。この一手間が、その他大勢の企業との差別化を生み、質の高い母集団形成に繋がります。
打ち手2:【Owned】YouTubeを”会社の素顔”を見せる劇場にする
採用サイトが「公式パンフレット」なら、YouTubeは「舞台裏のドキュメンタリー」です。活字では伝わらない、社員の笑顔、オフィスの空気感、会議の熱気。そうした“非言語情報”**こそが、学生の心を動かし、「この人たちと働きたい」という、強い動機を形成します。完璧な映像である必要はありません。むしろ、少しの手作り感が、リアルさと親近感を生むのです。
打ち手3:【Shared】「社員個人」を最強の“インフルエンサー”にする
現代の学生は、企業の「公式アカウント」よりも、そこで働く「個人のリアルな声」を、圧倒的に信頼します。社員一人ひとりが、あなたの採用サイトへの「小さな入り口」となる。この“人”を起点とした集客こそが、知名度の低い企業が使える、最も強力で、最も共感を呼ぶゲリラ戦術です。
打ち手4:【Earned】「Giveファースト」のコンテンツで、”評判”を創る
いきなり「応募してください」という広告は、学生に敬遠されます。そうではなく、まず、彼らの就職活動に、純粋に役立つ情報を提供する(Give)。その貢献を通じて、「この会社は、私たちのことを考えてくれている、良い会社だ」という信頼を勝ち取る。その信頼が、やがては「あの会社のコンテンツは、面白いらしい」という“評判(Earned Media)”となり、自然な形で学生を引き寄せるのです。
明日からできることリスト
- ・診断チェックを社内で実施して自社タイプを特定する
- チェックリスト(看板なき開店型/待ち祷師型/一方通行型 etc.)を使って、自社がどのタイプに近いかを把握し、共有する。
- ・ナビサイトの原稿を「予告編」型に書き換える案を作る
- 現在使っている求人ナビサイトなどに載せている文章を見直し、「続きが気になる」問いかけや謎要素を追加する試案を1つ書いてみる。
- ・社員による個人発信(SNS/ブログ)を一人ピックアップし始める
- 社内で比較的発信に意欲のある社員を巻き込んで、社員の日常や特別なプロジェクトの話などを発信内容の案を作成する。
- ・YouTubeや動画素材を取るための準備を始める
- スマホで撮れる短い“社内の雰囲気”動画を数本撮ってみる(オフィスツアー、若手×先輩の雑談など)。それらの素材を使って、まずサンプルとして社内共有する。
- ・Give型コンテンツのテーマ案を3つ考える
- 学生の役に立ちそうなテーマで、自社ならではの内容で記事や動画として提供できそうなものを3案リストアップ(例:業界の裏側/技術選定の苦労/働き方の工夫など)。
- ・採用サイトへの導線をチェックする
- 現在の採用サイト、SNS投稿、求人広告、説明会案内などからの “採用サイトへのリンク” がどれだけあるかを洗い出し、漏れがあれば追加できる場所をリストアップする。
「完璧な目的地」を作ることではなく、「そこへ至る、ワクワクする交通網」を張り巡らせること
採用担当者は、美しいサイトを作る、Webデザイナーではありません。
あなたは、まだ見ぬ宝島(あなたの会社)の魅力を伝え、そこへ至る無数のルート(集客導線)を、あらゆるメディアを駆使して設計・運営する、最高の都市計画家なのです。
誰も来ない採用サイトは、「失敗作」ではありません。
それは、まだ、その魅力を届けるための「交通インフラ」が、整備されていないだけ。
これから、あなた自身の手で、高速道路(広告)を通し、鉄道路線(Owned Media)を敷き、地域に愛されるバス路線(Shared Media)を走らせる。
そのプロセスの中にこそ、採用マーケターとしての、あなたの新しい、そして、最高のやりがいが待っているはずです。