打ち手辞典

『空席だらけの説明会』という悲劇をなくす“満員御礼”イベント集客

「会社説明会を開催しても、そもそも参加してくれる学生を集めるのが難しい。空席の目立つオンライン画面に向かって話すのは、本当につらい。」

最高の舞台と、熱意のこもった脚本を用意したのに、観客が一人もいない劇場。その静まり返った客席を前に、独り芝居を続ける役者のような、あの虚しさと徒労感。

この問題の本質は、あなたの会社に魅力がないのではなく、数多ある企業説明会や、YouTube、SNSといった可処分時間の奪い合いの中で、あなたの会社の説明会が、学生にとって「参加する価値のある、魅力的なイベント」として認識されていないという、極めてシンプルなマーケティングの課題です。

その「集客の壁」を打ち破り、採用担当者を「説明会の運営者」から、学生が行列を作るイベントを企画する「プロデューサー」へと進化させるための、新しい時代の“満員御礼”イベント集客術をご提案します。


ステップ0:なぜ、あなたの”劇場”には、観客が来ないのか?を診断しよう

学生が「参加する」ボタンを押すのをためらう説明会には、いくつかの共通した”魅力のなさ”があります。

  • □ 価値提案・不在型:
    説明会のタイトルが、ただの「〇〇株式会社 会社説明会」となっており、参加することで学生にどんなメリットがあるのか、全く伝わらない。
  • □ 一方通行・講義型:
    説明会の内容が、人事担当者が一方的に会社の歴史や事業内容を話すだけの「退屈な講義」であることが、告知文から透けて見えている。
  • □ ターゲット曖昧・無差別招待型:
    「全ての学生」を対象に、同じ内容、同じメッセージで集客しており、「あなたに来てほしい」という特別感が全くない。
  • □ タイミング・ミスマッチ型:
    テスト期間や、授業が多い平日の昼間など、学生の生活リズムを無視した、企業都合の日程で開催している。
  • □ 告知不足・直前告知型:
    開催日の数日前に、一度だけ告知するなど、学生の目に触れる機会を十分に作れていない。

これらは全て、説明会そのものを「一つの商品」として捉え、その商品を「マーケティングする」という視点が欠けていることが原因です。


ステップ1:思想をアップデートする。「会社説明」から「価値ある90分」へ

「会社説明会」という、企業目線の名前を、今日から使うのをやめましょう。

代わりに、学生が主語となる、魅力的な「イベント名」を考えます。

「イベント自体が、一つの商品である。会社だけでなく、その商品をマーケティングせよ」

あなたの仕事は、学生に会社を説明することではありません。学生の「知りたい」「学びたい」「成長したい」という欲求に応える、最高の「90分間の体験商品」をプロデュースし、その魅力を伝えることです。


ステップ2:“空席”を”満席”に変える、具体的な打ち手

思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「誰も来ない」を「予約殺到」に変える4つの打ち手をご紹介します。

1. 「イベントタイトル」の徹底的な”学生ごと”化

難易度 コスト 期間 次回の告知から
目的
“企業のお知らせ”から“自分ごと”へ。魅力的なコンテンツに転換
具体策
・「会社説明会」をやめ、学生が得る価値をタイトルに明記。
・例:「自己分析にも役立つ!『〇〇業界の未来と求められるスキル』」「若手社員が本音で語る!リアルな仕事と成長の軌跡」
主要KPI
・申込率(告知→申込)
・参加率(申込→実参加)
・SNSでのイベント名の言及/拡散

2. 「ターゲット別」説明会の複数開催

難易度 コスト 期間 次回の採用フローから
目的
“マス”から“ニッチ”へ。深く刺さる内容設計で質を高める
具体策
・「総合職」ではなく細分化した回を複数企画。
・例:エンジニア限定 CTO会/Uターン希望者 地方で働く回/女性のキャリア OG座談会
主要KPI
・各回のターゲット比率
・満足度アンケート
・参加者の選考エントリー率

3. 「登壇する社員」を主役としてプロデュース

難易度 コスト 期間 次回の告知から
目的
“会社”ではなく“人”に会いたい動機を創出する
具体策
・顔写真/経歴/趣味などパーソナル情報を大きく訴求。
・例:「入社3年目で〇〇を生んだ若手プランナー〇〇が登壇!」などキャッチを強化。
主要KPI
・「〇〇さん目当て」参加理由の件数
・当日の質問数・表情などエンゲージメント
・“顔の見える化”によるブランド向上

4. 「予約→参加」までのUXを徹底改善

難易度 コスト 低~中(ツール代) 期間 即時
目的
直前離脱の要因を排除し、参加率を最大化する
具体策
・1分で完了する超シンプル予約フォーム。
・完了/前日/1時間前の自動リマインド。URLは大きく明示。
・平日夜/土日など複数時間帯を用意。
主要KPI
・予約完了率
・実参加率(歩留まり)
・プロセスに関するネガ口コミの削減

成功のための深掘り解説

打ち手1:「イベントタイトル」の徹底的な”学生ごと”化

これが、集客における、最も重要で、最も費用対効果の高い一点です。学生は、企業の名前ではなく、自分の悩みを解決してくれたり、自分の未来を明るくしてくれたりする「情報」を探しています。説明会のタイトルを、学生のインサイト(本音の欲求)に寄り添ったものに変えるだけで、クリック率、そして申込率は劇的に変わります。

打ち手2:「ターゲット別」説明会の複数開催

不特定多数に向けたメッセージは、結局、誰の心にも深くは刺さりません。「エンジニア志望の、あなたへ」「地方で働きたい、あなたへ」と、明確に呼びかけることで、学生は「これは、自分のためのイベントだ」と、強い当事者意識を持ちます。参加者が少なくても、その全員が、あなたの会社にとって本当に会うべき人材であれば、それは最高に効率的な母集団形成と言えるのです。

打ち手3:「登壇する社員」を、主役としてプロデュースする

学生が本当に会いたいのは、「人事」ではありません。少しだけ未来の自分を投影できる、現場で活躍する「面白い先輩」です。彼らを、まるで映画の主役のように、魅力的にプロデュースすること。その人の物語、挑戦、人柄に、学生は惹きつけられ、「この人に会ってみたい」という、強力な参加動機が生まれるのです。

打ち手4:「予約から参加まで」のUXを徹底的に改善する

どんなに魅力的なイベントでも、予約が面倒だったり、参加URLが見つけにくかったりしただけで、学生は驚くほど簡単にあきらめてしまいます。申し込みから、リマインド、そして当日の参加までの全てのプロセスを、「いかに学生にストレスを与えないか」「いかに親切でいられるか」という視点で見直し、徹底的に改善すること。この地道な”おもてなし”の精神が、最終的な参加率を大きく左右します。

明日からできることリスト

  • ・現在の説明会告知タイトルを見直す
    • 次回告知のタイトル案を2〜3個出して、「学生視点で魅力を感じるものか」をチームで検討する(例「未来をつくる仕事の裏側」「若手社員が語る◯◯の挑戦」など)。
  • ・説明会ターゲットを分けた回を一つ企画する
    • 全学生向けではなく、例えば「エンジニア希望向け」「地方出身希望者向け」「女性キャリア」にフォーカスした説明会を設け、その告知・内容をそれぞれ調整する。
  • ・登壇社員のパーソナル情報を準備する
    • 若手社員またはユニークなバックグラウンドを持つ社員を一人選び、その人の写真・経験・趣味・ストーリーを説明会告知に盛り込む案を作っておく。
  • ・予約から参加までの UX をチェックする
    • 予約フォームを実際に使ってみて、どこで離脱しそうか自分で体験してみる。
    • リマインドメールのテンプレートを作る(完了直後/前日/当日など)。
  • ・開催日時・場所のバリエーションを検討する
    • 土日の午後/夕方/オンライン併用など学生の都合に合いやすいスケジュール案をいくつか準備し、どれが参加率が高そうか仮の案を立ててみる。

「退屈な説明会」の満席ではなく、「価値あるイベント」への招待

採用担当者は、会社の歴史を語る、学校の先生ではありません。

あなたは、学生の未来にとって、最高の価値を持つ“知のエンターテイメント”を企画し、上演する、劇場のプロデューサーなのです。

「空席だらけ」という現実は、あなたの会社の魅力がないからではありません。

その魅力を、最高の”体験商品”として、まだデザインできていないだけのこと。

「会社説明会」という、退屈な看板を、今日、あなた自身の手で下ろすこと。

その先にこそ、あなたの劇場が、未来の仲間たちの熱気で満員になる、新しい景色が待っているはずです。