『フォロワーが増えない』SNSの闇を抜ける“中の人”ブランディング術
「SNSを始めても、フォロワーは増えず、いいねもつかない。本当に学生に届いている実感がない。ただ、虚空に向かって独り言をつぶやいているようだ…」
まるで無人島で一人でラジオ放送を続けているDJのよう。渾身の選曲(投稿)も、熱い語り(メッセージ)も、誰の耳にも届いていない。その、成果の見えない活動に、日に日に心がすり減っていく感覚。
この問題の本質は、あなたが発信する情報に魅力がないのではなく、その発信スタイルが、学生がSNSに求める「人間的な繋がり」や「リアルな本音」と、致命的にズレていることにあります。
その悲しい「独り言」を、学生がファンになる「人気の生放送」へと転換させるための、新しい時代の“中の人”ブランディング術をご提案します。
ステップ0:なぜ、あなたの”つぶやき”は”独り言”になってしまうのか?を診断しよう
フォロワーが増えず、学生の心に響かないSNSアカウントには、いくつかの共通した”やってはいけない”運用があります。
- □ 宣伝・告知ばかり型:
投稿内容が、説明会の告知、エントリーの締め切り、プレスリリースといった、企業からの一方的な宣伝ばかり。 - □ 「誰」が話しているか不明型:
アイコンが会社のロゴで、文章も「〜です、〜ます」調の、体温の感じられない、無機質な”企業ボイス”で発信している。 - □ 一方通行・リプ返なし型:
自社の投稿はするが、学生からの質問リプライや、他のアカウントからのメンションには一切反応しない。 - □ 学生への”GIVE”不足型:
投稿内容が、自社の魅力や、自社の日常といった、「自分たちの話」に終始しており、学生の就活の悩みや、キャリアの不安に応える「お役立ち情報」が皆無。 - □ プラットフォーム文化・無視型:
Instagramでも、X(旧Twitter)でも、同じように、かしこまった長文を投稿するなど、各SNSの”文化”や”お作法”を理解していない。
これらは全て、SNSを「交流の場(コミュニティ)」ではなく、「広告を貼る掲示板」と勘違いしていることが原因です。
ステップ1:思想をアップデートする。「企業アカウント」の仮面を脱ぎ捨てる
「企業は、語るな。個人として、語らせよ」
これが、新しいSNS運用の鉄則です。学生は、無機質な「企業」とではなく、血の通った「個人」と繋がりたいのです。今日から、あなたのアカウントに、人間的な「人格(ペルソナ)」を与えましょう。
【“中の人”ブランディング】
- 名前(ニックネーム)を決める: 例:「人事のサトウ」「〇〇社の駆け出し広報A」
- キャラクターを設定する: 例:「熱血お兄さんキャラ」「データ分析好きの冷静お姉さんキャラ」「ゆるふわ癒し系キャラ」
- プロフィールを人間的にする: 「〇〇株式会社の人事担当。入社3年目。趣味はキャンプと激辛ラーメン巡り。就活生のリアルな悩みに、本音で向き合います!」
この「中の人」という、一人の人間が顔を出すだけで、アカウントは命を吹き込まれ、学生が話しかけやすい存在へと変わります。
ステップ2:“独り言”を”バズる投稿”へと変える、具体的な打ち手
思想のアップデートが完了したら、いよいよ具体的な戦術です。「スルーされる」を「フォローされる」に変える4つの打ち手をご紹介します。
1. 「中の人」ペルソナの設定とプロフィール作成
・ロゴ→似顔絵/本人写真へ。
・プロフィールに趣味・好きなもの・失敗談も記載。
・リプライ数増加
・“顔”の認知度
2. 「GIVE」コンテンツ比率を8割にする
・残り2割で告知(8:2ルール)。
・フォロワー増加率
・感謝コメント数
3. 「交流」を目的にした積極コミュニケーション
・自社投稿でも質問を投げ対話を促進(就活の軸は?等)。
・外部へのリプ/メンション数
・良好な関係の蓄積
4. 「社員の日常」で共感を生む発信
・失敗談と先輩のフォローなど温かい関係性を描写。
・企業文化への理解深化
・入社後ギャップ低減
成功のための深掘り解説
打ち手1:「中の人」ペルソナの設定と、人間味あふれるプロフィール作成
これが、全ての土台です。人は、ロゴマークとは友達になれません。しかし、「キャンプ好きのサトウさん」とは、友達になれる可能性があります。あなたが、一人の人間として顔を出し、個性をさらけ出すこと。その“自己開示”こそが、学生があなたに親近感を抱き、フォローボタンを押す、最初の、そして最も重要なきっかけになるのです。
打ち手2:「GIVE(価値提供)」コンテンツ比率を8割にする
信頼関係とは、銀行口座のようなものです。「応募してください」というお願い(引き出し)をするためには、まず、口座に十分な残高(信頼)を積み立てておく必要があります。学生の役に立つ情報を、惜しみなく、そして継続的に提供(入金)し続けること。その“信頼の貯金”が、いざという時に、大きな力になるのです。
打ち手3:「交流」を目的とした、積極的なコミュニケーション
SNSは、街の広場です。広場の真ん中で、自分のことばかりを大声で叫んでいても、誰も友達になってはくれません。広場にいる人々の輪に入り、彼らの話に耳を傾け、共感し、時にはアドバイスを送る。その地道な“井戸端会議”こそが、コミュニティの一員として認められ、信頼されるための、唯一の道です。
打ち手4:「社員の日常」という、最強の“共感”コンテンツ
学生が本当に知りたいのは、立派な事業内容や、綺麗なオフィスではありません。「そこで働く人たちが、日々、どんな表情で、どんな気持ちで過ごしているのか」という、リアルな空気感です。あなたの何気ない日常のワンシーンこそが、どんなパンフレットよりも雄弁に、会社のリアルなカルチャーを物語り、「この人たちと働いたら、楽しそうだな」という、最も強い入社動機を育むのです。
明日からできることリスト
- ・中の人ペルソナの設定
- 社員(人事や広報)から一人を「中の人」として選び、ニックネーム・キャラクター・趣味・好きな話題などをプロフィールに盛り込む案を準備する。
- ・プロフィール改善案を作る
- ロゴではなく写真や似顔絵を使い、プロフィール欄に趣味・失敗談など“人間味”のある要素を入れた案を1つ作成する。
- ・投稿内容の比率を見直す
- “GIVE(役立ち・悩み相談・業界情報)”中心に投稿プランを立て直し、宣伝や告知投稿は全体の出稿量の2割以内に抑えるスケジュールを設計する。
- ・交流行動の習慣化
- 社員アカウントで、学生や他アカウントへの返信/リプライ/コメントを毎週一定数行うルールを設ける(例:週に3件は「就活相談」などのリプ返しをする)。
- ・社員の日常をシェアする投稿を準備する
- 日常風景/失敗談/仕事終わりのエピソードなど、等身大の内容を撮影・記録しておき、投稿素材としてストックする。
- ・投稿スタイルのプラットフォーム別調整を試す
- Instagram/X/TikTokなど、それぞれの文化や投稿スタイル(キャプション/動画/画像)に応じて、一つの投稿案を複数形式で作ってみて反応を比較する。
「フォロワーの多い企業アカウント」ではなく、「学生から信頼される、一人の先輩」
採用担当者は、SNS上で、会社の公式見解を述べる、無機質なスピーカーではありません。
あなたは、就職活動という、孤独で、不安な旅路を歩む学生たちに、少しだけ先を歩く人生の先輩として、寄り添い、励まし、有益な情報を提供する、頼れる“伴走者”なのです。
フォロワーが増えないのは、あなたの会社に魅力がないからではありません。
その魅力を、”中の人”の、温かい、人間味あふれる言葉で、まだ語りきれていないだけ。
その仮面を外し、一人の人間として、コミュニティの輪に飛び込むこと。
その先にこそ、あなたの「独り言」が、多くの学生の心を動かす「人気の声」へと変わる、新しい景色が待っているはずです。